「エリー、僕と、結婚してください」

 輝くような金の髪に、緑の目。アーモンド形の形よい目がエリナを見つめて細まっている。
 愛しくてならない、という表情を浮かべられて、エリナは困惑した。
 だって、こんな、地位も名誉もすべて持ち合わせている青年――竜種の王、竜王たる彼が、赤毛にそばかす、目だけは空の色をしているとほめてもらえるけれど、それだけの、容貌の劣る上に地位なんて知らない平民のエレナに求婚する意味がわからない。
 エレナはぎゅっとこぶしを握って、震える声で尋ねた。

「どうして、私なんかに求婚を……?」
「あなたが、僕の運命の番だからです。エリナ。愛しいひと」

 さっと頭から冷水を浴びせられたような心地がした。
 運命の番、番……。
 その言葉には、悪い思い出しかない。
 跪いてエリナに求婚してくる竜王から一歩、距離をとる。
 竜王は不思議そうに目を瞬いて「エリー?」とエリナの名を呼んだ。
 懐かしい響きをもつ音で。