「何で何も言わないの?」



私だって,手,離してって,言わないけど。

少し早いような,そうでもないようなテンポで歩いていた。

それが余計に,怒ってるのか普通なのか,何も考えてないのか分からなくする。



「飲食店で水浸しになるようなヴァンパイアだから,引いたの? それとも,私が言った言葉が気に入らなかったの?」



何か,言ってよ。

よく分からない焦りに,息がつまりそう。

血夜くんはくるっと振り返った。

そして少し固まると,ずいっと私による。

じっと見られて,私は狼狽えた。



「な,なに……」

「その前に,1ついいですか」



その真剣な表情に,私はたじろぐ。

血夜くんは,私から目を離さないどころか,瞬き1つしなかった。