「そうだけど,だから?」

「ううん,別に。昨日は血夜くんと一緒だったって聞いたから」



答えになってない。

聞いたから,なんなの?

血夜くんの周りじゃ,こんなのは日常茶飯事。

どこにいて,誰といて,どんな様子だったか。

利害関係でお互いに網を大きく広げているのだから,全て筒抜けてしまう。

それで楽しむだけなら,いいのに。



「そろそろ止めなよ,いい加減性格悪いよ」 



性格なんて,産まれたときから悪かった。

無口で,大事なときほどだんまりで。

後になってからじゃないと,聞かれても望み1つ言えなかった。



「なに黙ってんの? 好きじゃないんでしょ? 毎日好きって言われてもなんも響かなくて,血夜くんがどんな気持ちとか何も考えてないんだよね」

「お互いどんなメンタルしてんのって感じだけど,朱鳥さんのは最悪。思わせ振りに受け入れてさ,好きじゃないなら切ってあげなよ」



可哀想って,同情してるの?

血夜くんに?

どうして,あなた達に



「これ以上血夜くんに近づかないで。折角楽しみに来たのに,あんたに会うとか最悪」



そんなこと,言われなくちゃいけないの。



「──朱鳥さん!!!」



聞き覚えのある声。

目の端っこに,見覚えのある顔。

聞いたのは,きっと最後だけだ。

だけど,それだけで充分の様に,私を心配し駆け寄ってくる。

でも,遅いんだな,血夜くん。