翌日


今日は校門で黒スーツの人たちが大本と立花の遺体を片付けていた。
僕らを見ると気持ち悪いものを見るような目を向ける。

僕らの中から犯人を探そうとはしていないようだ。
まあ明らかに異常だもんね。今までの死体全部。


細かいことは片桐と枕崎が先生を通して説明しているらしい。昨日聞いた。
今は遺体から死因を調べてるらしいけど…なんかわかったら教えてくれないのかな。



教室には既に何人か来ていた。
最近僕と祐樹はいつもより遅い時間に登校している。足が進まないってのもあるけどね。

教室はいつもよりもざわついている。


「なにあれ」
祐樹が黒板の上を見上げて言った。
見るとカメラのようなものが付いていた。

「監視カメラだって。捜査に使いたいらしい。昨日警察の人が取り付けてた」
片桐がカメラを見て言った。

「へぇ…今更?」
「ああ…今更」
片桐と呆れたように目を合わせてもう一度カメラを見る。


「なんかさ、警察ってあんまり捜査に積極的じゃないの?」
僕の問いにいつの間にかこちらに来ていた枕崎がため息をついた。
「ああ、気味悪がってるだけ。大っぴらに捜査をするとマスコミに見つかるからって建前らしいけど、多分そんなやる気はないと思う」

「現代を担う若者が死んでるってのに?」
「非現実的すぎるからだろうね。対処の仕方が分からないんだと思う」
はあ、そうすか。


「…ひどいよ。助けてくれないの?それが仕事なんじゃないの?」
浜崎がカメラを睨みつけて言った。
「犯人見つけてよ…お願いだから」
牧村が懇願するように両手を結んだ。

ひょっとしたら警察は、僕らが全滅するのを待っているかもしれない。
証言者がいなくなればテキトーな理由を後付けできるから。


「手に負えないんだろうね。俺らのことが」
やっぱり大人って弱い。



不思議な話だよね。僕らは決して弱くなるために成長してるわけじゃないのに。

先生達はよく、生徒のことを一番に考えてるとか、背中を押すのが大人の役目だとか、足並みを揃えて一緒に考えるのがやるべきことだとか言うけど。

僕らからすれば、十数年長く生きてる大人に、隣を歩かれるのも後ろを歩かれるのも気持ちが悪いだけだ。

先に行って道を切り開いてくれよ。僕らの進む道を指し示してくれよ。
こんなところに置き去りにしないでさ。

あーあ。大人になんてなりたくない。