あの巾着袋の中には、スマホや財布、鍵といった貴重品が詰め込まれている。盗られるわけにいかない。
「誰か!」
わたしの叫び声と同時に、ドンっと花火の音が響いた。
花火、始まったんだ……。
思えば、いつの間にか道を歩く人がほとんどいなくなっている。皆、確保した席で花火を見ているからだろう。
そんな中でわたしは、地面に手をついたまま、泣きそうに声を上げている。
「お願い!」
きっとダメなのだと思いながらも、もう一度叫んだその瞬間だった。
「こいつっ、止まりやがれ!」
「ぐあっ……クソ」
──どこからか走って来た誰かが、ひったくり犯を蹴とばした。
そして、わたしの巾着袋を取りあげようと引っ張る。
その誰かとひったくり犯はしばらく揉み合っていたけど、やがて諦めたのはひったくり犯の方だった。
舌打ちをしたひったくり犯は、巾着袋を投げ捨ててそのまま逃げだす。
「おい待て! 誰か警察! あの男ひったくりだ!」
ひったくり犯からわたしの巾着袋を取り返してくれたその人の声は……浅見くんのものだった。



