『柚子のキャベツ丼の作り方』 

【材料】
キャベツ半玉、しめじ1袋(エリンギでもいいよ)、豚こま好きなだけ(ひき肉でもいいよ)、卵3個くらい、柚子半分、かつお節好きなだけ

【調味料】
味噌大盛り大さじ1くらい、酒大さじ1~2くらい、みりん&砂糖適当(お好みで加減してね)、ニンニクチューブにゅるっと、ショウガチューブにゅるっと



「なんか、ざっくりしてるなー」
 柚葉がメモ用紙に走り書きしたレシピを眺め、柚樹は呆れた。

 料理のレシピってもっときっちりしてるんじゃないの?
 くらい、とか、にゅるっと、とか、好きなだけ、とか、○○でもいいよ、とか、あまりにいい加減なような。

「冷蔵庫にあるものを使ってテキトーに、まあまあ美味しく作る。これが私流のおふくろの味よ」
「おふくろって」
 こほんと、柚葉は咳払いをして続ける。

「それにね、キャベツ半玉って言っても、結構大きさにバラツキがあるんだから。春キャベツか冬キャベツかでも全然違うのよ。特に野菜は、時期やスーパーによって1玉や、1束、1本の大きさや量が微妙に違うの。それに合わせて調味料は自分で加減していくもんなのよ」
「ふうん」
 なんか、言いくるめられているような、と、柚樹は柚葉を疑い見る。
 大雑把な柚葉の料理だから大雑把なだけなんじゃね?

 柚葉はこほん、とまた咳払いをした。
「と、とにかく、要は栄養があってそこそこ美味しければいいの。さ、始めるわよ。まずは調味料を計量カップに入れて混ぜ合わせて」

「え? オレがやるの?」
 きょとんとする柚樹に、柚葉が「当たり前じゃない!」と呆れる。

「オレがやらなきゃ誰がやるの。なんのためにレシピ書いたと思ってるのよ! 朔太郎君だって料理してるんでしょ。これ簡単だから。ほら、計量カップ持ってきて」

 柚葉に促された柚樹は「計量カップ計量カップ」とキョロキョロして、首を傾げた。

「つか、計量カップって何だっけ?」
「あんたねー」
 柚葉が大きな大きなため息を吐く。

「し、仕方ないだろ! 料理とか、学校の調理実習でチラッとやっただけなんだから」
「そうねぇ、仕方ないわねぇって、それが問題なの! ちょっとはお母さんの手伝いしなさいよ」

 呆れながらも、柚葉は包丁置き場の下からメモリ付きのカップを取り出し「これが計量カップ。それから、これが大さじ。で、これが菜箸よ。ちゃんと覚えるのよ」と、いろんな引き出しを開けて調理器具を台の上に置いていく。

「私はご飯を炊くから、メモに書いたレシピ通りに続けてね」

 鼻歌混じりに、冷蔵庫脇のストッカーを開けて炊飯窯に米をザーと入れる柚葉は、ここ数日、ずっと料理をしていただけあって、キッチンのどこに何があるかを熟知しているようだった。