CCパークは今年のお正月にオープンした県内最大級の屋内遊園施設だ。
 館内はボウリングもカラオケもゲームもビリヤードも、全部遊び放題。
 おまけに駅前のシャトルバスに乗れば、たった10分でつけちゃうという超近場。

 土日は混むため、学校を休んで平日に遊びに行くのがこの辺の小学生のセオリーだ。そしてなんと、今日は金曜日。平日じゃん!

(やりぃ! ずっと行きたかったんだよな!)
 柚樹は心の中でガッツポーズする。

 同じアミューズメントパークでも、動物園や遊園地に比べて、CCパークは子どもっぽさがなくて、逆に中高生が友達と楽しむ場所みたいな、ちょっと大人なイメージがある。
 だから高学年向けな人気スポットだった。

 でも、さすがに小学生が友達だけで遊びに行くにはハードルが高い。
 だから、家族でいくしかないのだが、小6男子的に、親と出かける=ハズい、なので、みんな「親が行きたがるから仕方なくさー」と一言言い訳したあと、「CCパーク行ったぜ! すげーよ、あそこ」と話すのだ。

 柚樹もその流行りに便乗したくて、春休みに父さんと母さんに「行こう」と誘ったのだが、いつもなら、二つ返事で仕事の日程調整をする父さんも、家族三人の思い出を何より大切にしている母さんも、何故かいい顔をしなかった。

「あそこは人混みが多くてお前が風邪をひくから」とか「今はオープンしたばかりだし、もう少し落ち着いてからにしよう」とか、あやふやな理由をあれこれ並べる父さんにイラついたっけ。

 いつもなら「いいわね」とすぐに頷く母さんも、困り顔で何も言わなくて、変だな、と思った。
 でもあの時は、真面目な母さんのことだから、CCパークを不良の遊び場みたいに思ってるんだ、と考えていた。
 だけど、今思えば……

(あの時、もう母さんのお腹には赤ちゃんがいたのかも)
 赤ちゃんがどのくらいで生まれるのか、詳しくは知らないから、違うかもだけど。

 だけど、そのあたりだ。
 母さんが時々調子悪そうにしていて「大丈夫?」と聞いたら「ちょっと風邪をこじらせたみたい。病院で薬を貰ったから心配ないわ」と言っていたのは。

(あれが……世に言うつわりってやつだったのかも)