今日の朝食は、サンドイッチだった。
 昨日の夜、母さんのおかずを二人で食べている時に「明日の朝食閃いちゃった」と柚葉が言っていたけど。

 柚樹は、食パンをめくって(げっ)と、眉をよせた。サニーレタスとスクランブルエッグまではいい。そこに茶色い物体が挟んであるのだ。

「これ、まさかきんぴらごぼうじゃ……」
「ピンポーン。昨日食べた時にピンと来たのよね」

「ピンと来たって、サンドイッチにきんぴらごぼうはないだろ……」
 げんなりする柚樹に「まあ、騙されたと思って食べてみて」と柚葉が強引に勧める。

「オレ、あんま、きんぴら好きじゃないんだよな、口の中の水分持ってかれるからさぁ」
 母さんのきんぴらごぼうは、給食のよりは食べやすいけど、きんぴらごぼうというメニュー自体が、そもそも成長期の男子はあんまり好きじゃないのだ。とはいえ、せっかく作ってくれたしなと、仕方なくかじってみる。

「どう?」
「……まあまあイケる」

 意外なことに、旨かった。
 ふわふわのスクランブルエッグとシャキシャキのレタスとしんなり甘辛いきんぴらごぼうが、パンに塗られたマヨネーズによって見事に調和している。
 水分の少ないきんぴらごぼうが、すごくジューシーに感じられるのはマヨネーズのせいだろうか。

「でしょー。私、こういう冷蔵庫の、残り物を使った、栄養満点な、レシピが得意なの。略してRNAレシピ」と柚葉が得意げに口角を上げる。

(RNAレシピって)とネーミングに首を傾げつつ、柚樹はきんぴらサンドイッチをシャクシャク頬張りながら尋ねる。

「そういや、柚葉の家って、朝はパン派?」
「どうして?」

「ラピュタパン、変なパンケーキ、サンドイッチって、今までずっとパン系攻めてるから」
 柚葉はちょっと考えて「そうね。パン派、パン派」と頷く。

「和朝食じゃ絶対勝てそうにないし」
「ん、何て?」

 きんぴらの咀嚼音でよく聞き取れなかった柚樹に「なんでもなーい。食べたらすぐに出発よ」と柚葉はにっこり笑ってみせた。