「美音!辞書貸して!!」


 ばんっと音を立てて、部屋のドアが開いた。


「つ、椿!」


 私と藤宮くんは慌てて離れる。


 突然の来訪者は隣に住む、幼なじみの椿だった。


「美音のお母さんが、うちの母さんとお茶してて、美音が彼氏連れてきたとか言うから」


「だからってなんで来るんだよ」


「美音に何かあったら大変だろ!高校生のうちは節度のある付き合いをだな!」


「お父さんかよ」


 椿が来たことで、あんなに騒いでいた心臓も落ち着いてしまった。


 びっくりした。もしあのまま椿が来なかったら、私達どうしてたのかな。


 そんなことを考えて頬が熱くなるのを感じた。


 椿と話している藤宮くんをちらりと横目で見て、私はまた顔を真っ赤にした。


 椿は藤宮くんがお誕生日だと知り、盛大にお祝いの言葉を言いつつもケーキを食べ始めた。その様子を見て、私達はまた笑った。


「佐藤、今日はありがとう」


 ふいにお礼を言われて、私はちょっと照れくさくて俯きがちに返答した。


「うん」


 喜んでもらえてよかった。これから先もずっと、何度でもお祝いするからね。


 これからもずっと、二人一緒にいられますように。



「お誕生日おめでとう!藤宮くん!」




終わり