甘くて優しい青春恋物語 ~お隣さんと夏祭りと、熱くて甘すぎる恋~

 だから……!

「万季ちゃんごめん! その質問には答えられない!」

「あっ、ちょっ! 千鶴ってば~!」

 逃げるが勝ち、だ!

 私は後ろから追いかけてくる万季ちゃんの声を無視し、早足で教室を出て行った。



 はぁ……とりあえず、この辺りまで来れば大丈夫かな。

 教室から結構遠い特別教室の前まで来て、呼吸をゆっくり整える。

 流石に万季ちゃんでも、ここまでは追いかけてはこないでしょ……。

 そう思っていた矢先。

「千鶴ちゃん。」

「っ! れ、怜司君……ど、どうしてここに?」

「そんなの、追いかけてきたに決まってるでしょ。千鶴ちゃん、すっごく気まずそうにしてたから気になっちゃって。」

 ば、バレてる……。

 怜司君ってこんなに勘鋭いっけ、なんて思ってしまう。

 いや、今まで私が気付いてなかっただけかも……。

 そこまで悶々と、考えを巡らせていると。

「ねぇ、千鶴ちゃんが嫌なら良いんだけど……何に悩んでたか、教えてくれないかな。もちろん、千代河さんには言わないから。」