「……理仁さん、変だった。」

 私は自分のお部屋に帰り、クッションを抱きかかえながら呟いた。

 あんなに甘い視線も、表情も知らない。

 理仁さんのあんな顔、初めて見たよ……。

 愛おしそうに見つめるあの表情が、頭から離れてくれようとしない。

 それほどまでに脳裏に焼き付いてしまっている。

 しかもそれが自分を見つめていたものとなると……う~、ますます分からない。

 でも、理仁さんも花火大会のことを考えてたんだ。意外……。

 理仁さんってそういったイベント事には興味がないものだと思っていたから、少しびっくりした。

 ……だけど、何はともあれ結果的にはこれで良いんだ!

 私も誘おうって考えてたし、これはこれで……心配する事も、ないはず。

『茉優ちゃんは、彼氏さんと行くの? 花火大会。』

『う……い、行くって言ったら、どうするんですか。』

 その時不意に、茉優ちゃんとの会話が思い出される。

 そういえば茉優ちゃん、あの口ぶりだと彼氏さんと行くんだよね。

 もしかしたら会えるかも……と、一瞬考える。