これは 夢なのですか

 夢であったら・・・

 そう思うことは いけないことですか

 全てが夢ならば あなたには出逢えなかったはずなのに・・・

 心が痛みます

 泣かないで・・・ください

 光が曇って 雨になるのは

 あなたとの お別れの時だけでいい

 泣かないでください 泣かないで・・・

 別れではないのです 心の奥に残るだけ

 あなたのために・・・

 愛する その人のために──



 ◆ ◆ ◆



 さらさらさらさら……
 さらさらさらさら……
 
 乾いた風が髪を引いていく。
 
 ──真夜中。
 
 彼等の闘いは闇夜の奥、半刻(はんとき)ほど続けられていた。葉隠(はがくれ)一族三人対、涼雨(りょうう)等三十数人。例え葉隠が暗闇の闘いを得意とするとは云え、どうみても影狼(かげろう)達に勝機などある筈がない。

 満月ではあるが、今宵の月は薄い雲の所為で、朧に光を放つだけである。

 追い詰められた影狼達は、ひとまず何処かに身を隠そうと心を()いていた。

「どうやら今宵の闘いは、こちらの勝ちのようですね」

 端正な顔を軽く歪ませ、涼雨は薄く笑んだ。

「……」

 影狼は何も言わない。

 いや、影狼とはそういう男なのだ。例えこちらに勝ち目がなくとも、相手側に機を移すような軽々しい言動はしない。否定せず肯定せず、ただその涼しい瞳を敵に向けるだけである。