会社で牧原君と再会して最初の金曜日、仕事が終わってから歓迎会が開かれた。いつもは上下関係にうるさい専務も、
「今日は無礼講!」
 なんて言って。一番お酒に強そうな顔してるけど、実はあんまり飲めないみたいで。わりと早くに酔っぱらって、しばらく席にいませんでした……。

「ねぇ、高野さんと牧原課長って、どういう関係?」

 聞いてきたのは、今井先輩。
 私と牧原君は、部署は違うけどよくお昼を一緒に食べていた。ただいろんな話をしているだけで、元鞘の話は、残念ながら。

「高校の時に同じクラスだったんです」
「えっ、高野さんて、アメリカだっけ?」
「いえ、俺が向こう行く前です」

 今井先輩は、へぇ~、と言いながら、私に『課長ってどんな高校生だったの?』と聞いてきた。確かに仲良くはしてたけど短期間だったし、それ以前は接触がなかったから、あまり詳しいことは知りません。

「でも、ものすごく優しかったです」
「やっぱり? 見ててもそんな感じ!」

 先輩も、ちょっと酔ってたかもしれない。私と牧原君の話を少し聞いてから、今度は別の若い人に話しかけていた。年齢を聞いたり、彼女いるのって聞いたり。先輩、彼氏いるんだから、ほどほどにしてくださいね……。


 歓迎会は2時間で終わって、私と牧原君は一緒に帰ることになった。二次会のカラオケに行くっていう人もいたけど。

「なぁ、夕菜」
「えっ……」

 突然名前で呼ばれてびっくりした。付き合ってた時は『夕菜ちゃん』だったから。ここ1週間は、『おまえ』とか『高野』だったから。慣れない呼ばれ方にちょっとドキドキしたけど、なぜかもう、牧原君に恋心は芽生えない。

「これから何か予定ある?」
「ないけど……どうしたの?」
「飲み直さない? 3人で」


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 高校に入ってから数日後、奈緒に彼氏ができた。男の子との関わりをあまり許してもらえない家庭だったから、本当に、私も嬉しかった。

「クローバーの力って、すごいね」

 見つけた人は幸せになる、というのは本当だと思った。もしかしたら、神様は見てくれてるのかな。幸せになって欲しい、って思った人にだけ、四つ葉のクローバーを見せてくれるのかな。

「それにさ、葉っぱの形、ハートに見えない?」
「……ほんとだ」

 奈緒は、本当に可愛らしくて。女の私から見ても、憧れるような存在で。

「放っとけるわけないだろ!」

 って、弘樹はいつも言ってた。誰とでも仲良くするから。すぐに「うん」って返事するから。……それが奈緒の良いところ、だったんだけどね。

 だから余計に、奈緒に申し訳なくて。

 奈緒が旅立ってから1年後、弘樹は高校卒業と同時に奈緒を卒業すると言った。奈緒がつけていた指輪──弘樹とのペアリングを私に預けて、卒業証書が欲しいと言った。奈緒との思い出を運びながら新しい世界へ向かう列車の、高野夕菜という切符──。

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