「どうしたんだよ」




ボーッとしていた私に,シュウが声をかけた。

美海は何も言わないでいてくれて,ハルは空気を読むように口をつぐんだ。

面倒嫌いのシュウだけが,そんな風にするなら全部吐けと促してくる。



「……ううん,どうもしない」



昨日の事とか,全部関係なくて。

ただ,ここでの事とか,みんなの事。

懐かしんだりしてただけ。

何でもなくねぇだろと言わんばかりのその顔に,本音の先手を打つ。



「ここで,皆に逢えて良かった。友達になれて良かった。シュウはもしかしたら,直ぐに私の事なんて大事じゃなくなるかもしれないけどね」



学園長に,昨日の晩連絡を取った。

嘘と隠し事が多すぎて,もう自分で打ち明けるのが怖くなっちゃったから。

3人には,後から学園長にほんとの身分だけ教えて貰えるよう頼んである。

だからシュウは特に,どうでもいいと切り捨て忘れそうだと思った。

だけ,なんだけど。



「なんだよそれ,やっぱ変なやつだな。しかも……もうすぐいなくなるやつみたいだ」



やっぱりシュウは誰より周りを理解して,誰より鋭い。

私は,笑った。

否定しなかったことに気が付いたのは,ハルくらい,かな。