「どうして美海がお兄ちゃんの名前を出すの? 美海は何を知ってるの? どうして私が,サクラさんや美海の話をお兄ちゃんから聞いてないといけないの?」



美海は何を知ってるの?

分かんないよ,ここは秘密が多すぎる。

お兄ちゃんが死んで,私は人間で,ちはやはヴァンパイアで。

お兄ちゃんと関係があった有名なヴァンパイアは,私の友達の美海。

何が,どうなってるの。



「お姉ちゃんは,サクラは駆くんと付き合ってたからだよ」



お兄ちゃんの,彼女……

それが言葉通りなのか,お兄ちゃんが弄ばれていたのか,分からない。

お兄ちゃんの家族で,それでなくても有名で。

美海のお姉ちゃんでもある。

今まで,そんなサクラさんと1度もすれ違わなかったことが不思議だ。



「私と浅海は,本当はもっと前に出逢った事がある。お姉ちゃんと駆くんが公園で出逢って,お姉ちゃんが怪我させちゃったって,浅海と一緒に連れて帰ってきたの」



うーんと考えながら,美海は事も無げに説明する。

私は理解するだけで必死だった。



「そして,高校生になる直前,駆くんがお姉ちゃんをたまたま見かけて……ここで再開した2人は,恋に落ちた。お姉ちゃんはずっと片想いしてたから,喜んで,おしまい」



ざっくりとしていた。

でも,片想いと聞く分に,サクラさんはお兄ちゃんに本気だったように思う。