「なに」
ハル達や,他の誰にも気付かれないよう。
人間の校舎に紛れ込んだ私は,さっと例の教室に入る。
そして,予想通り一人しかいなかったその人物に,白々しくも口にした。
目の前のちはやの眉が,不愉快げに寄る。
私はくずして座るちはやを,上から見下ろした。
ちはやが私のスカートの裾を握って,慌てた私を愉快げに見ながらぐいと引く。
深い緑色のスカートが,ピンと張った。
人間は黄緑のそのスカートだけど,ブレザーに真っ赤なチェックのリボンは共通だ。
「何すんの! 女子のスカートなんて触れるだけで重罪…」
膝を付いたのは,ちはやの真ん前で。
正面から合ってしまった瞳に,綺麗すぎて戸惑う。
ピリビリッと,右腕に電撃のようなものが走った。
思わず背をのけ反ると,手当てが浮いて見える場所を,ちはやがつつくどころか握っている所で。
私は,……このヴァンパイア!!! と唇を噛み締める。
もし私の秘密を知られていなければ,気の迷いで正体を言いふらしたかもしれない。



