ヴァンパイアガールズ

これで,貸し借りは無しにしてよ。

私は護身グッズの先端で,今度は自分の右腕を深くなぞった。

思ったより痛くて,涙を滲ませながら歯を食い縛る。

寝てたって,起きたときに食べ物を貰ったって。

ちっともよくなるはずがない。

これは,ただのお礼で。

最初で最後の血の提供で。

ただでさえ血の悩みで倒れているちはやからそこそこの血を抜いてしまったことへの謝罪で。

その血をちはやの口から返すのは気が引けたからで。

私は言い訳を重ねながら,ボタボタとちはやの口に落ちていく血液を眺めた。

美味しいかは知らないよ。

あげたことないから,感想なんて貰ったこともない。

だから文句言わないでよ,元気になったからって。

でもちょっと,流しすぎたかもしんない。

逆に自分や傷跡が心配になるレベルだった。

もういいかと,勝手に拝借したタオルで押さえる。

現状の出血量の他に,深く行きすぎた不安もあった。

縫うとか,言われるかも。

取り敢えずガーゼと包帯をぐるぐるにして,その上にタオルを縛り付ける。

早退します,そう書き置きを残して



「…………ぁ? っつおまえ!!!!」



ヤバイと顔も見せずに走り出した。

後ろ姿では,バレない。

……はず。

行き先は,病院だ。

バッグに入っている,ヴァンパイアあるあるの帽子を目深に被り,人間として診察を受けた。