「知ってるよ。でも俺らはわざわざそんなこと口にしないだろ? 変わることもあるしって話なんだよ」

「俺も,とは言ってくれないんだ?」



ハルは空元気にもいつも通りにも見える顔で笑った。

シュウからまた,定番のうるせぇが発動する。



「一緒にしないで,ハル。浅海の好きは純粋まっさらな情愛で,ハルのシュウへのは情愛。浅海へのは情欲であって,浅海のそれとは違う。僕も,って言うのは,まちがい」

「……らしいけど?」

「……どっちもだよ,失礼な」



私は,シュウと顔を見合わせたあとため息をついたハルに驚いた。

情欲って……と頭で辞書を引けば引くほど分からない。

皆あっさり受け入れ白状してるけど,意味,知ってる?

そう赤くなるのは,私一人だけ。

つまり,知ってる? ではないのだ。

私だけが,知らなかった,なのだ。



「わっ話題,かえよ……」



そんな細い声しか出せないのだから,あぁ,私はやっぱりヴァンパイアにはなりきれない。