「で,お前ら仲直りしたのかケンカしてんのかどっちなんだよ」



シャリ,と勝手に持ち込んだアイスを食べながら,シュウが言った。



「それ,溶けちゃうしどうしよもないから,早く食べちゃってよね」



先生に見つかる前に,と。

私は冷たい視線を送った。

栄養になんか欠片もならないくせに,味が旨いと言って浪費する。

シュウの育った環境がそうさせるのか,本人の趣味なのかは分からないけど,理由なく製品を口にするヴァンパイアがそう多くないのは知っていた。

美海は満たされなくて虚しいと遠ざけるくらいだし,ハルは顎がいたくなるとよく言って断っている。

基本的に,ヴァンパイアは血で乾杯するだけではと,パーティに添える彩りくらいにしか思っていないのだ。



「で,どうなの?」



シュウが焦れたように言った。




「私はどっちでもいいんだよ,浅海。浅海が選ぶなら,それが正解。いらないなら,すてたらいいよ」



これは独占欲なんだろうか。

ハルに対してとても情の薄いことをいいながら,私にベットリとスライムのようにくっつく美海。

ハルを蔑ろにするなと,シュウが怒ることもない。

美海に私を困らせる意図が無いことは確かだし,多分,本心なんだと思う。

ヴァンパイアの関わり方はよく分からない。

好きは偏り,嫌いは少なく。

その時必要なら集まるし,いらないならそれでいい。

時々,どう反応したらいいか分からなくなるのだ。




「ケンカしてた,訳じゃないんだよ。今もね。ただ,なんだろう。受け入れ直したの,お互いに。だから,馴染むのに時間がかかりそうなの」