勘違いして、自惚れた。
恥ずかしくて、今すぐ自分が作ったお弁当をゴミ箱に捨てたくて。
今、目の前で繰り広げられている光景を見たくなくて、「ユキ、ごめん。ちょっとトイレ」と、席を立つ。
「えっ!? お弁当持ったまま?」
そんなユキの声に足を止めることなく、私は教室を後にした。
今まで血を吸うところを見ても、耐えることができたのに。早川さんの卵焼きを食べているのを見るのは耐えられなかった。
……三日後に死ぬだなんて言われなければ、卵焼きを作ることもしなかったと思うし、耐えることができた気がする。
学校の屋上は綺麗なワケではない。
掃除なんてされていないから、そこら中にゴミが散らばっている。そんな中、空を眺めながらお弁当を広げる。捨てようと思っていたけど、なんとなく捨てることができなかった。
ラップを包んでいる血入りの卵焼きから食べようと手を伸ばす。一口噛じるも血の味なんて分からなかった。
これを仮に食べさせたとしても、純が摂取しなきゃならない量は取れるはずもない。
お弁当箱には卵焼きとおにぎりしか入れてきていない。全然美味しそうにも見えない。……食べさせなくてよかった。そう思いながら蓋をした。その時だった。
「お腹減った」
そう言いながら屋上のドアを開けたのは純だった。
……純。
「今日弁当忘れてさ。その弁当、残ってる?」
物欲しそうな目でこちらを見る純に動揺する。早川さんが脳内にチラつき、八つ当たりのようにブスッと顔を歪ませた。
「……残ってるけど」
「食べたい。昨日の卵焼き。アレ、美味しかった」
「早川さんの卵焼き食べてたじゃん」
「うん、だけど、あれ、俺が好きな味じゃないし。俺は遥が食べさせてくれた昨日の卵焼きが食べたい」



