翌朝、今日も自分でお弁当を作ることを親に告げ、味が無い卵焼きとは別に、自分の指を少し切って血入りの卵焼きを作った。これで、調味料が美味しかったのか、私の血が美味しかったのかが確認できる。
区別がつくように、血の味がついた卵焼きをラップで包む。
昨日より弁当箱に多めに入れ蓋をした。お母さんは、指に新傷を作っている私を見て「アンタ、本当ドジねぇー」と、呆れていた。
意図的に指を切っているだなんて思いもしていない。そんな母に対して『純が美味しいって言ってくれたから』と伝えると、『純くんは本当にイケメンで優しいわねー』と、両頬に手を当て顔を赤くしていた。
母のときめいている顔は見るべきではないのかもしれない。
大事なお弁当を持って学校へ行く。昼休みをまだかまだかと待ち続け、ようやくその瞬間はやってきた。
純の元へ近づこうと席を立つと、
「安斉くーん、卵焼き作ったのー!!」
同じクラスの美人女子、早川さんが長い髪を揺らしながら純の席へ近寄った。
「…………」
「はい、アーン」と、食べさせているその姿に呆然としていると、ユキが私の肩を慰めるようにポンと叩いた。
「昨日、遥が安斉くんに卵焼きをあげてるところ、見られてんだと思うよ」
「美味しい?」と問いかける早川さんに、純は「ウン」と答えていた。
………………私の血が美味しいわけじゃなかった。



