『ヴァンパイアは美男美女が多い』と言いながら、吸血鬼に対して『魔物』呼ばわりするユキは、妄想として楽しむのは有りだけど、それが現実になるのはNGと言っているように思える。


 ロマンチストのようでどこか冷めているように見えるユキ。私のお弁当に入っている具を覗き込み、シメシメといった表情をしながら唐揚げを箸で摘まんで口に頬張った。


 人間は、ご飯を食べて睡眠を取ることによって生きていける。けれど、吸血鬼はそういうワケにはいかない。『血を吸われると最後、一滴残らず搾り取られる』というのは、あくまでヴァンパイア次第だが純の場合は何故か一日に数滴の血を接種するだけで済んでいる。


 なので、怪我をしている人の元に近寄り、どさくさに紛れて血を舐めるその姿から『王子』と呼ばれるようになってしまった。


 『怪我人とはいえ、知らない人間の血を吸ってるんだから相手はシンデレラにでもなった気分でしょうよ』と嫌味交じりに純に言うと、返ってくる返事は必ず、『おまえの血だけは怪我してても飲まない』と睨まれる。


 私の血を受け付けないほど、純は私のことが嫌いらしい。


 そんな純に私は恋愛感情を抱いている。ヴァンパイアだからとか関係なく、昔から純のことが好きだった。


 何でよりによって振り向いてくれるはずない純のことを好きになってしまったんだろう。