「えっ、止め方!?」
完全に頭が真っ白になってうろたえている私に、純はフッと笑みをこぼした。
純のことは誰よりも知っているつもりだけど、こういう風に笑い合うのはいつぶりだろう。少なくとも、小学校の高学年に上がってからは会話も減り、何気なく避けていた気もする。だから純が私のことを好きだなんて一ミリも思っていなかった。
「興奮したら牙出るってことは聞かされてたから知ってたけど、どうしよう、こんなんじゃ何もできねぇ」
『ちくしょう』と、頭を抱える純がおかしくて愛おしくて、涙もすっかり引っ込んでしまった。
「あっ、牙を削ればいい!」
一つの解決策を見出した純は今にも牙を削りそうな雰囲気だ。そんな純を「まって、まって!」と慌てて止める。
「やだ、削らないで! 私、純のその牙好きなの!」
「……でも、牙出てたら遥に触れれないし」
「わ、私が触れる。純がしたいこと、積極的に頑張るから、だから削らないで。そのままの純が好きなの」
止めるのに必死で余計なことを言ってしまったと気づいたのは、純の満面な笑顔を見た後だった。
「じゃあ今、俺が言ってほしいこと、言ってくれる?」
「え? あ、うん? えっと……あっ、卵焼き、明日も作る?」
「遥の血吸わせてもらえばいいから、作ってくれなくていいけど? まあ、血吸ったら牙は出ちゃうけど」
「……も、もう、何を言ってほしいのか分かんないよ!」
純がこんなに意地が悪いだなんて知らなかった。今目の前にいる人は本当に純なのか疑うレベルだ。でも、新鮮で、それがまた初々しい。



