「俺、キス初めて」
今までみたことがないくらいギラついた表情を向けられる。ほんのり空いた口からは鋭い牙のようなものが見えた。
「純、牙……初めてみた」
『ヴァンパイア』と聞いた時に純の口の中を見せてもらったことがある。尖っているところはなく、至って普通の人間となんら変わらない歯だった。
それから何度か口の中を見せてもらっていたが、やはり口の中に牙はなく、『ヴァンパイアといっても牙が刃えているワケではないんだな』と思っていたけど、今、目の前の純には牙が刃えている。
「うん、欲情してるから」
「欲……情……?」
「遥にもっと触れたいって思ってるから。俺も自分の歯がこんな風になるの初めてなんだ。だから、どうしたら良いか分からなくて、結構混乱してる」
目に涙を浮かべながら私を見つめる純。漏れまくっているフェロモンは、私をおかしくさせる。
これ以上近づいちゃダメだ。
反射的に純の胸を押し、そっと距離を取る。
「ご、ごめん、私まで変になりそうだから……その……少し距離を保とう?」
「それって遥も俺に欲情してるってこと?」
距離を取ったはずなのに、純は愛おしそうに私の頬を撫でた。
「あ、あの、純……色気が……」
「遥にしか見せないから大丈夫。それより、あんまり可愛い反応してたら、俺、止め方分からなくなるから」



