「俺、自分の理想を遥に押し付けてた。遥の血の味は俺が生きる希望であってほしいって思うのに、それ以上に不味かったら嫌だなって。遥の血の味を知るのがずっと怖かった。だから、他の人間の生き血でずっと我慢してた。幻滅したくなかったんだ」
大事なことをいっぺんに言われて、頭が追いつかない。
「純、私のこと嫌いなんじゃなかったの? 私の血は吸わないって、噛み殺すって……」
ひとつ、どうしても確かめたかったことを聞いてみた。
「嫌いだなんて一言も言ってないだろ。『遥の血だけは吸わない』って言ったのも、『不味かったら噛み殺すかもしれない』って言ったのも、勝手に理想を押し付けてただけ。ごめん」
純は眉を下げ、私の唇をそっと撫でる。
「……血、出てる」
「え、あ、うん……でも大したことないから」
「舐めていい?」
「へ……んんっ!?」
私の唇から出ていた血を純はペロッと舐めた。
恥ずかしくて体に力が入る。
「はあ、すご……この味、卵焼きのときより体にくる。ヤバイ」
ハアと、苦しそうな吐息が交じる。純は余裕がない表情で私を抱きしめた。そんな風に抱きつかれると、私のことが好きなんじゃないかって勘違いしてしまう。
純が求めているのは私じゃない、私の血だ。
そう思えば思うほど、純への『好き』が一気に溢れ出して、「う、ぐ……ふっ、ううっ」声にならない声と一緒に一筋の涙が私の目から流れた。
肩を震わせて泣く私を見て、
「遥!? ごめん、その……嫌だったよな。ほんとごめん」
純は肩を擦りながら何度も「ごめん」と謝った。



