「血、入れてないよ……」
「じゃあ確認させてよ」
「『確認』って……入れてないって言ってんじゃん!」
強気な目を向けられたため、私も大きな声で対抗する。けれど、小柳くんは引き下がってくれる様子がない。それどころか、『ハハッ』と、私を小バカにした。
「そんなムキにならなくても、誰も入れたらダメなんて言ってないじゃん? まあ、血入ってるなんて聞いたら、『キッショ、コイツ、ヤンデレかよ』って思うし、俺なら絶対ごめんだけどねー」
『だから宮崎さんは絶対ごめんだけどね』と決めつける小柳くんに言い返すことができない。頭が回らない。純がヴァンパイアだと決めつけられているようで、初めての出来事で、こういうとき何と答えたらいいのか分からなかった。
唇を噛み、必死に怒りを押し殺していると、
「痛ッ゙……」
唇を切ったらしい、ほんのり口の中に血の味が滲んだ。
……私の血、全然美味しくないじゃん。マズイじゃん。
「まあ、いいや。じゃあさ、血の味確かめさせてよ」
「…………血?」
「うん、唇、血出てんじゃん??」
小柳くんは私に少しずつ近寄ってくる。
人のことヤンデレ呼ばわりしたくせに。宮崎さんは絶対イヤだって言ったくせに、何で近づいてくるの!?
ジリジリと近づいてくる小柳くん。一歩一歩引き下がるけれど、逃げ場がなくなり、恐怖で地べたに座り込んでしまった。
小柳くんもしゃがみ込む。
「わ、私……純とは幼なじみだから」
「だから?」
「ただ、純が心配なの」
小柳くんの顔が私に近づく。唇と唇があと少しで触れてしまいそうで、必死の抵抗で、更に唇を噛む。
「アンタさ、噛み殺されたいの?」



