どういうワケか、人間とは異なる生物が十万人に一人の割合でこの世には存在している。


 人の血を餌として生き延びる吸血鬼種のヴァンパイア。『もし、仮に出会ってしまったら真っ先にこちらが取る行動は逃げること』らしい。


 ヴァンパイアに血を吸われると最後。一滴残らず搾り取られるのだと噂されている。


 その存在は十万人に一人の確立と言われているが、私の幼なじみの安斉純(あんざいじゅん)はヴァンパイアだ。


 このことは、純の両親と私の両親と私、宮崎遥(みやざきはるか)以外は知らされてはいない。





「だからかな! ヴァンパイアって、美男美女が多いらしいよ!?」


 二年二組の教室で机の上にお弁当を広げていると、目を輝かせながら身を乗りだしてきたのは、友人のユキ。ユキはやり込んでいるゲームの影響からか、この手のお話が大好きだ。


 そんなユキに対して、私は幼なじみの純を思い浮かべる。確かに、純はめちゃめちゃかっこいい。純のことをヴァンパイアと知らない世間は、純を王子様のように扱っている。


「どうでもいいけど、私はヴァンパイアより吸血鬼って言う方が好き。ヴァンパイアってなんか怖いじゃん」

 などと、自分論を押し付けてみると、

「吸血鬼ってさ、墓から蘇り人の生き血を吸う魔物なんだよ? そう考えるとまさに鬼だよねー、私はヴァンパイアの方が断然いい!」


 ヴァンパイアオタク気味のユキは、吸血鬼の由来をドヤ顔で説明してきた。