優しい学級委員長の、隠れた吸血溺愛衝動は。

 確か、スクールバッグに入れてあったと思うし……少しくらい放っておいても、大丈夫だよね。

 そう結論付けて私は、資料綴じの作業を開始させようとする。

 ……でも、できなかった。

「ちょっと失礼するね、和奏さん。」

「えっ? ……ひゃっ。」

 おもむろに切ったほうの手を持ち上げられ、あろう事か光聖君は怪我した場所を舐めてきた。

 こ、光聖君っ? な、何してるの……?

 光聖君の舌が指に当たって、恥ずかしさがぶわっと襲ってくる。

 けれどそんな私なんかお構いなしというように、光聖君は舐めた場所を自分のハンカチで拭いてくれて。

「これで完治したんじゃないかな? どう?」

 その後にそんな耳を疑うような事をさらっと言われ、私はただ驚くしかできなかった。

 だって……さっきまで切って血が滲んでいたところが、何もなかったように治っていたから。

 ど、どういう事……? 一体何が起こって……!?

 怪我した場所がこんなにあっさり、しかも傷跡も残らないくらい綺麗に治るなんて。

 怪我する前と変わらない状態に戻っている指を、信じられなくてまじまじと見てしまう。