「葉っぱが丸まってるのを見間違えたんじゃないか?」

「そうもしれませんね。
 やっぱり、オリーブもう一本、植えませんか?」

「そうだな」
と二人で話しながら、運転手さんにスーツケースを積み込んでもらう。

 タクシーに乗り込んだ和香は振り返ると、
「行ってきます」
と今は我が家となった白い家に向かい挨拶した。

 和香たちの乗ったタクシーが走り去ったあと、夏が終わったばかりの庭に涼やかな風が吹いた。

 オリーブの葉が揺れ、それと一緒に、たったひとつだけなっているオリーブの実もふわりふわりと揺れていた。


                       完