不埒な上司と一夜で恋は生まれません

「でも、雇われている家で重宝されているみたいで、やり甲斐はあるみたいです」
と和香は微笑む。

「母は、かつて名家の妻だったのをいかして、奥様たちの要求を誰よりも早く察知し、叶えることができるみたいで。

 今は、仕事が生きがいのようです。

 遠くにいるので、なかなか会うこともできませんが」

「今、どちらに?」
と訊く耀の母に、

「イギリスの貴族の邸宅で働いているらしいです」
と答えると、

「なんかちょっと楽しそうだな……」
と耀が呟く。

 そう。
 一家はバラバラになってしまったが。

 母は逆境の中から自分が輝ける仕事を見つけ出し。

 今の方がちょっと楽しそうな感じだ。