不埒な上司と一夜で恋は生まれません

「俺も一人でトンカツ屋に入ってみた。

 だけど、この先ずっとお前とあの店に行くんだと思ってたし。

 家族で来るところも想像したし。

 あそこの店長、野球チームのコーチなんで息子の面倒も見て欲しいと思ってたし」

「……サッカーしたいって言い出したら、どうするつもりなんですか」

 計画性がありすぎる人も困りますね、と言って和香は笑う。

「ああ、そうだ。
 もう細かいところまで計画を立ててしまっていて、修正がきかない。

 俺の人生はお前なしでは成り立たない」

 そう言い、耀は和香の手を握ってきた。

「お前は得体の知れないことばっかり言ったりやったりするし。

 復讐以外に関しては、生き方がゆるすぎるお前とは、根本的に意見が合わない気がする。

 だが――

 何故かお前しかいないと思うんだ。

 お前がいないと、トンカツ屋さえ、なにかが違う。

 木のいい香りも。

 サクサクのトンカツも。

 甘辛いねったりとしたソースも。

 お前がいないと、なんか違うんだ。

 この家も違う。

 自分の家なのに、借り物みたいだ。

 お前も一緒にいて初めて、ここは俺の家になるんだ」

 和香……と耀はそっと口づけてくる。