不埒な上司と一夜で恋は生まれません

 当時のことをなんて言い訳しても、我々に野心があったのは確かだ、と専務は言う。

「和香くん、こんなことを言うのは卑怯なんだが。

 このまま私たちを静かに引退させてくれないか。

 私たちの罪が暴かれると、就職したばかりの末の息子や、孫たちにも悪影響があるだろうし。

 あの子たちに罪はないから」

「和香たち一家を離散させておいて、自分達の家族だけ守ろうというのは、おかしくないか?」
と羽積は言ってくれるが。

 和香の頭には、あの日、祖父の手を握り、ニコニコ歩いていた男の子の姿が浮かんでいた。

 あの子を自分みたいな目には遭わせたくないな、と思う。