不埒な上司と一夜で恋は生まれません

「なにが真実でもいいだろう。
 過去のことさえ忘れれば、お前は今、幸せなはずだ。

 ……お前にとって厄介なもの。

 お前を惑わせるものが目の前から消えれば、お前は幸せに暮らしていけるはず」

「え?」

 羽積は酒のなくなったコップを和香に返して言う。

「ありがとう。
 俺は今日は幸せだった」

 おやすみ、と羽積は部屋に入っていってしまう。

「あ、ありがとうございました。
 羽積さん」

 話を聞いてもらって少しスッキリした和香は、もう閉まっている扉に向かい、深々と頭を下げた。