不埒な上司と一夜で恋は生まれません

「羽積さんは最初から知ってたんですかね? なにもかも」

 なんの話とも語らずにそう言うと、羽積は、

「俺たちがなんでも知ってると思うなよ。

 そうだったら、わざわざこんなところで、いろんな職業の人間に身をやつして、ゴソゴソしてたりしないだろ」
と言う。

 はは、そうですよね、と笑ったあとで、和香はコップの中を見つめて言った。

「全部放り出して逃げたら、ややこしいこと全部、終わりにできるかなーとか、ちょっと思っちゃったりもするんですよね」

「なにを放り出すんだ?
 神森耀か?

 それとも、神森耀か?

 あるいは、神森耀か?」

「なんで、何度も課長だけ放り出されるんですか……」
と和香は苦笑いする。