不埒な上司と一夜で恋は生まれません

 


「いやー、驚きましたねー、お母様」

 帰りの車の中、和香は母の真似をし、朗々と響く威厳のある声で言った。

「吾輩は庶民であるっ。
 名前はまだないっ、みたいな」

「それだとうちの親が、猫みたいになるじゃないか……」

「でも、『~は~であるっ』って言い切ったら、『名前はまだないっ』って続けたくなりませんか?」

 いや、そこは、言い方次第では……。