不埒な上司と一夜で恋は生まれません

 そろそろ、ぬるくなろうとしている。

 一日、ビール二本は呑まないことにしている。

 酔うと何事にも対処できなくなるからだ。

 そのとき、三階の主婦、富美加(ふみか)が階段を上がってきた。

 子どもを塾に送って行ったきたようだ。

 部活が終わってから、真っ暗な時間に塾。

 子どもも大変だな、と思ったとき、

「こ、こんばんはっ、羽積さんっ」
と言われ、こんばんは、と返す。

「ああ、そうだ。
 これ、あげます」
と羽積は呑んでない方の缶ビールを彼女に渡した。

 和香に渡そうと思って持って出たものを家に寂しく持って戻るのが嫌だったからだ。