不埒な上司と一夜で恋は生まれません

「あの会社にいると、わからなくなります。

 そして、課長といると、もっとわからなくなります。

 ……私、昔から記憶力良くて。

 きゅるるるっと過去の映像も鮮明に頭の中で再生できるんです。

 無実の罪で悔し涙を流した父の背中とか。

 私たちに(るい)が及ばぬよう、知り合いに預けて消えた母親の最後の笑顔とか。

 辛いけど、何度も思い出して、胸にその悔しさを焼き付けました。

 いつの日か、復讐を遂げるために。

 そのために、知り合いのツテで、いろんな英才教育を(ほどこ)してくれるあの組織にも入れてもらった。

 でも――

 最近、その鮮明だったはずの記憶が遠いんです。