不埒な上司と一夜で恋は生まれません

 


 課長が不思議なことを言いはじめた、と思いながら、和香は聞いていた。

「なんで、俺とお前は噂にならないんだろうな?
 こんなに一緒にいるのに」
と真剣な顔で耀は言う。

 いやいや、それは私と課長が釣り合ってないからですよ、と和香は思い、そう言った。

 耀が去ったあとも、立ち止まり考え込んでいると、美那が通りかかった。

「お疲れ。
 どうしたの?

 神森課長もあんたも元気ないけど」
と振り返りながら言う。

「いえ、それが……」
と和香は今の話を美那にした。

「あら、噂になってないことはないわよ。
 みんな、大っぴらに言うのを遠慮してるだけよ。

 神森課長って、そんな話題で(はや)し立てたら大人気なく怒りそうだし」

 ……まあ、確かに。