不埒な上司と一夜で恋は生まれません

「双眼鏡越しに恋に落ちた気がする」
と言ったあとで、羽積は、

「あ」
と言う。

「なんですか?」

 羽積はアパートを指差し言った。

「いや、目、合ってたな。
 お前、ときどきこっちを見てた」

「そうですね。
 気配を感じたので。

 まあ、双眼鏡越しに恋には落ちないと思いますが」
と付け足し、逃げた。

 真顔で見つめてこられたからだ。