不埒な上司と一夜で恋は生まれません

「ときどき迷うんです。
 
『お買い物に行って、お財布からお札を出したとき。

 お札の折り目を見ながら、自分の前にこれを持ってた人の人生を思ったりしますよね』って言ったら、

『それ、わかるな~』
 って微笑まれた常務を今更、追い落とす必要あるのかなとか」

「……何故、その例を出してきたのかわからんが。

 まあ……」
と慎重に言葉を選びながら、耀は言った。

「過去のことはわからないが。
 お前にとっては、今、お前の目の前にいる常務がすべてだろうよ」

「そう……ですよね」

 そういえば、とふと思い出したように和香は言う。