不埒な上司と一夜で恋は生まれません

「そういえば、課長に人生の憂いってあります?」
となんとなく訊いてみる。

「家のローンかな」
と耀は現実的なことを言う。

 いや、あなた充分お金持ってそうですけど、と思ったとき、耀が訊いてきた。

「お前はなにかあるのか」

 ありありですよ、と和香は思う。

 このまま復讐を果たしていいのかとか。

 エレベーターで楽しく語らった常務を断罪するのは胸が痛むとか。

 常務に追い落とされた、と言葉では聞いたが、実際に見てはいないので、あまり実感はない。

 そのせいで、そんな風に思うのだろうか?

 溜息をもらした和香は、耀に素直に今の感情を吐露してみる。