不埒な上司と一夜で恋は生まれません

 

 二人でちょっと出かけなさいよ、と焦った風な耀の母に言われ、和香は耀と家を出た。

「うちの親、なに言い出すんだろうな」

 車の中で耀が言う。

「だいたい、あの人にこの世の憂さとかあるのか」
と言う耀の横顔を見ながら、和香は言った。

「……急に生じたのかもしれないですね。
 息子が不安とか」

 いや、息子に対して不安を抱いたのは、そのあとか。

 耀が羽積のことを、
「俺の王子様だから」
と言ったときだろう。

 確かに羽積さんは王子様みたいですけどね。

 でも、私の思う王子様像とはちょっと違いますけどね、と思う和香の頭の中の王子様はなんとなく耀だったのだが、恥ずかしいので言えなかった。