不埒な上司と一夜で恋は生まれません

 


 仕事が終わったあと、和香は耀に誘われ、

 というか、耀のうちの鍋とミステリーの新刊に誘われ、耀の車で彼の自宅へと向かっていた。

 赤信号で止まったとき、和香は前の車を見て言う。

「前を金沢ナンバーの車が走っていると、なんかいい感じですよね」

「……どんな感じだ」

「金沢って文字を見てるだけで。

 和菓子、とか。
 金箔、とか思って、なんかありがたい車が前を走っているように感じます」

「……お手軽に幸せになれる奴だな。

 金沢ナンバーの車だからって、老舗の和菓子売って歩いてたり、金粉まき散らして走ってたりしないからな」
と言われたが。

 いや、なんかそういうイメージなだけですよ。

 いいではないですか、と和香は思う。