不埒な上司と一夜で恋は生まれません

「課長?」
と上から和香の窺うような声がした。

 近づいてないのに、何故、わかる……、
と思いながら、耀は、そっと出ていく。

「すまない。
 盗み聞きをするつもりはなかったんだ。

 忘れ物を届けに来ただけだ。

 助手席に落ちてたぞ、和香」

 羽積が耀の手にある箱を見て言う。

「……なんで、『本格天然鰹出汁(かつおだし)』なんて落としてんだ。
 イヤリングとかにしとけよ」

 いや、うちの料理に使っている出汁が気に入ったと和香が言うので、一箱やったのだ。