不埒な上司と一夜で恋は生まれません




 和香がした忘れ物を届けに、耀は和香のアパート下まで引き返してきていた。

 だが、上で話している声が聞こえ、そっと耳を澄ます。

 和香と男の声だ。

 二人の声は周囲に聞こえないようにか、小さかった。

「専務も常務もいいところもあるなとは思うんですよ」

「じゃあ、やめとけよ」

 なに男と深刻な話してるんだ。

 例の羽積か。

 そこで、耀は、ハッとする。

 やめるんだ、和香っ。

 あれほどのイケメンに、そんな打ち明け話をして、慰められたりしたら。
 恋に落ちるに決まっている!

 そのとき、二人が黙った。