不埒な上司と一夜で恋は生まれません

「帰る予定だったんですよ」

「帰る予定でも帰れなくなる。
 それが男と女というものだろう」

「いやまあ、映画観ながら寝ちゃっただけなんで」

 はは……と俯き笑った和香を羽積が見つめる。

 三階の主婦の人だったら、舞い上がってしまいそうな感じにまっすぐに。

「やめればいいだけの話だろ」
と羽積が言い、和香は顔を上げた。

「復讐をやめればいいだけの話だ。
 そしたら、お前は普通のOLだ。

 ……まあ、FBIだの、なんだのにいただけで、充分普通じゃないんだが」

 羽積は和香の迷いを見透かすようにそう言った。