不埒な上司と一夜で恋は生まれません

 


「豆腐は普通に四角く切ったんでいいんだぞ。
 なんか芸術的に切ったりするなよ」

「まあ、豆腐ですからね。
 でも、菊の花になら切れますよ」

 などと言いながら、ふたり並んで豆腐や野菜を切る。

「鍋の豆腐を菊の花にしてどうする。
 めでたい感じになるじゃないか」
と言ったあとで、耀は言う。

「ああ、めでたいか。
 お前が我が家の住人となった日だもんな」

 ええっ? と和香は叫んだが。

 そうか。
 あの指紋登録の儀式のことかと思う。