不埒な上司と一夜で恋は生まれません

 ともかく、あいつがなにかやらかして、警察に捕まったりするのだけは阻止しなければ。

 ……いっそ、俺が先にやってしまうというのも手か。

 あいつ、意外と切れ者っぽいが。

 結局はマヌケそうだしな、と思いながら、一階の外廊下を通ろうとして、カートの車輪が溝にはまった。

 変にお洒落に見せるために、ところどころ、溝で廊下が区切られていたからだ。

 余計なお洒落心はいらないから、実用性を重視しろっ、と車輪を押し出そうとしたが上手くいかない。

 カートを抱えて持ち上げようと屈んだとき、通りかかった誰かが一緒に抱えてくれた。

「ありがとう」
と顔を上げときには、もう相手は角を曲がって行ってしまっていた。

 うむ。
 こちらが礼を言う間もなく、すっと立ち去るとか。

 スマートな行いだな。