不埒な上司と一夜で恋は生まれません

 


 企画事業部を覗くと、和香はナイフで鉛筆を削っていた。

 それを美那たちが、
「器用ねえ」
と眺めている。

 ……仕事しろ、企画事業部、と思いながら、耀も遠くから、その『特技はナイフ』な女を見つめていた。

「前の職場で習ったんですよ」
と小器用にナイフを使いながら、和香が言う。

 FBIでか。

 いや、FBIは研修に行ってただけだったか。

「鉛筆削りで削るより綺麗ね」

「この方が自分で好きな形に削れますしね。
 私は細長いのが好きなんですよ」
と和香はその鉛筆を天井の蛍光灯に向かい、(かか)げ見ている。

 美しく削られた鉛筆は、鋭いその先端で誰でも()れそうだった。