不埒な上司と一夜で恋は生まれません

 


「――と思いました」

 花のない藤棚を見ながら、和香は、さっき思ったことをまるっと耀に言ってみた。

「……何故、直接、本人に言う」

 お前、案外、ちょろいなっ、と言われ、
「何故ですか」
と和香は訊き返す。

「図書館めぐりは休日がつぶれるし、労力もいるが。
 本買ってくれたからってのは、なんだ。

 誰でも簡単に買えるだろ。
 本を買うだけで、お前の王子様になれるのか。

 お前に気のある男には、あいつに本をプレゼントするなと言わなければ」
と言う耀に、和香は笑って言った。

「いや~、私に気のある人なんていませんが。
 いたとしても、普通は、もっと違うものをくれようとするんじゃないですかね?」